Italia エピソード その1  1983年ごろ   

高校2年生の時、京都の祇園会館で「父 パードレ・パドローネ」という
映画を観ました。

サルデーニャ地方の羊飼いの青年を主人公に父という権威と所有物の
ように扱われる主人公の青年の対立関係、そしてイタリアという近代
国家とサルデーニャという地方性の対立関係をユニークなリズムで
描いた作品です。

といっても当時の僕にはさっぱり分からない難解な映画に映りました。

だって、それまでに知っていた映画といえばハリウッド映画が中心で、
起承転結がはっきりした文字通り「一般的」な映画ばかりだったからです。



この映画の冒頭は、映画の原作者となった言語学者のガヴィーノ・レッダ
本人が、確か斧を持って小学校の校舎らしい建物の中に登場します。

 「こんにちは、私が原作者のレッダです。19〜年、父が授業中に急に
教室に侵入してきて私を連れ去って行ったのです。私は羊飼いとして
育てられるために山の中に閉じ込められました。〜(略)〜。これが私の
父です。さぁ、これから映画が始まりますよ」


みたいな感じで、その斧を父役のオメロ・アントヌッティ(最高!!)に
渡す。そしてその父が意気込んで教室にいきなり侵入し、「羊飼いに
学問は必要ない!」という理屈で、山に連れ去る・・・・というとっても
ユニークなファーストシーンでした。

 僕は、このファーストシーンにいきなり「なんじゃこりゃ〜!」と感動
したのですが、一番衝撃的だったのは、ガヴィーノ少年が山に幽閉
され(現代じゃ完全に犯罪です!)、羊との生活を始めるのですが、
この羊がとっても意地悪で搾乳のときに糞を乳のバケツに落としたり
して、ガヴィーノ少年をとても困らせる。

で、ガヴィーノ少年もその羊を折檻したりするのですが、そうすると
羊が意地悪な目をしながら、あろうことか交尾をしだすんです。

その姿をじっと凝視するガヴィーノ少年。するとバッグで妙なあえぎ
声のような音声が流れ出す。すると今度はキャメラが村の少年達に
向いて彼らは鶏小屋に侵入してそこでマスターベーションしてる。

ニコニコ笑いあって、また気持ちよさそうに集団で自慰してるんです。

するとまたそのあえぎ声のトーンが上がっていく。するとその集団
マスターベーション(なんじゃそりゃ!)をガヴィーノの父がロバに
跨っている見ている。

そして思い立ったように「ハッ!」とロバに鞭を入れて家路を急ぐ。
家に急いで帰ってきた父を、ガヴィーノの母が見ている。父と母が
視線を交わらせると、母がすぐ理解したように寝室に急ぐ。

すると父が寝室に飛び込んできてこんどは人間の交尾が始まる。
すると今度はキャメラが村中を俯瞰するような角度から右から左へ
パンして、そのころには「アヘアヘ」のあえぎ声が最高潮に達していて
「おいおい村中、交尾かよ!」と言いたくなるようなすごいシークエンス。
(ある意味爆笑!)

 映画館は異様な雰囲気でした。僕一人、興奮と緊張と、わけの
分からなさから熱狂していたのかもしれませんが、このような露骨で
面白いセックス描写は初めてだったのでとっても新鮮だった。

 そのあとガヴィーノ少年は、外の世界から届いた「音の世界」に
目覚め、父に反抗し、家を出て軍隊に入る。家=家父長制度から
個人を解放し、軍隊=国家のなかで自分のアイデンティティとして
の生まれ故郷=地方、というものに目覚めていく。彼が言葉を獲得し
、自らを解放していく感じ、強い父が老いぼれていく様子や、軍隊で
田舎者とバカにされながらも友情関係を築き上げていく様がグッと
来て、所謂お涙頂戴の感動とはちがう、感動を味わったような気が
しました。

またキャメラワークや色彩も独特の暗さと淡さを持っていて素敵です。




おそらく、この映画は「1900年」よりも前に観ていたと思う。
だからイタリアを意識しだした最初のエピソードとして導入しました。

   愛 + セックス +  地方⇔国家  +  集団⇔個人  

 この映画には、愛とセックス、田舎と国、そして集団と個人と言うテーマが
自然に共存していて「人間性」の深さや面白さをユニークな形で教えてくれる。

ユニークとかインパクトの強さ=イタリアなんだ、と若気の至りなりに考えて
いたことを思い出します。

 その後、「カオス・シチリア物語」「グッド・モーニング・バビロン」や
「サン・ロレンツォの夜」「太陽は夜も輝く」「フィオリーレ」などで、日本で
も一貫した評価を得たタヴィアーニ兄弟監督ですが、この「父 パードレ
・パドローネ」は初期の荒々しい活力がみなぎっていて、もっとも彼らら
しい作品と言っても良いのではないでしょうか。

是非、一度見てみてください。リズム感がユニークできっと笑えます。


      
父 パードレ・パドローネPADRE PADRONE

 この映画は同名の小説であり、日本語訳も出ています。とっても「元気の出る」本です。
 イチオシしておきます!!是非、読んでね!
                     ↓
   父パードレ・パドローネ―ある羊飼いの教育    朝日選書 (528)


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