神戸ワイナリーのカベルネ・ソーヴィニョン


   ブドウ畑へ!!   第四回  2005年8月21日(日)


  メルロー、シャルドネ、リースリング、
  ピノ・ノワールを食べる!!



  ヴェレゾン(着色期)が始まって約10日経った神戸ワイナリーの畑を
  訪問してきました。

  今回はちょうどアポイントが日曜日だったのでリクエストを頂いていた
  お客様と共にお邪魔してきました。

  到着するとすぐに栽培担当の末松さんに神戸ワイナリーの事務室に
  案内されます。

  

  応接室には三田村先生、醸造課長の高坂さんもいらっしゃって何やら
  緊張した空気を感じさせます。

  三田村先生が少し顔をほころばせながら静かに言います。

  「これからの天候がワイン作りにとって最大の山場になります」

  現在(8月19日) シャルドネの酸度が8.5、糖度が19.9という値。
  これが酸度が7〜6に下がり、糖度が22〜23に上ると、さあ収穫!
  ということになります。


  ヴェレゾン(ブドウが色づくこと)後は、日中の陽が照ることによってブドウの
   旨味が凝縮していきます。

  また夜温がしっかりと下がること(26度以下であること)でワインの生命線
t  とも言える「酸」の値が落ちないそうです。


   この一日の寒暖の差がブドウに旨味を蓄積していくことになるのです。


  「今年はこのままで雨が降らなければ”グレート”なヴィンテージに
  なりますよ!」



  三田村先生が目を細めている。

   少量の雨なら水は地表を重力にしたがって落ちていくだけなので地下
   深く伸びている根っこは水分を吸わないから大丈夫。

   (水分をつかさどる根っこは深い層に根ざすそうです)

   でも一日中降り続けて水溜りのようなものができるくらいに地表がずぶずぶ
   になるとアウト。


  「過去の自分達の作品が基準点になる。それは造ってきた経験者じゃ
  ないと分からんことですよ。」

  
事務所の中が三田村先生の自信で充満している・・・そんな感じが
  しました。



  高坂さんから一枚の紙を渡される。それは神戸ワイナリーの契約農家の
  畑のランク付けをした表でした。A,+B、B、−B、C。


  神戸ワイナリーには、契約農家の畑が周辺に多く存在しているので
  これまでの経験、そして畑の所有者の気質などによって畑をランク付け
  している。

  (畑の気候的条件だけではなく所有者の気質によっても随分と
   できあがるブドウの質は変わるそうです。)

  これ、まさにワインの本質の王道を走ってますね。
  「ワインは畑から生まれる」ということ。

  
   冷涼な北側の畑で栽培されるシャルドネは夜温がさがって、酸の付き
   も良く、ほとんどがAランクのブドウになっているそうです(^^)


  「リースリングはどうですか?」

   神戸ワイナリーの愛着が最も感じられるブドウの出来について聞いて  
   みた。

  「ここに来てバンプ病にやられるものがでてきてますんで、もう一回
   雨に降られるとやばいかもしれません。」と栽培担当の末松さん。

  「え?バンプ?」

  僕は、パンプ病という名前は初めて聞いたので、一瞬「ヴァンパイアー」とか
  の吸血鬼を想像したのですが、良く聞いてみると

 
 「晩腐病」

  という、果実が熟してからカビにやられる病気だそうで、果皮の薄いリース
  リングは、この病気にかかりやすいということでした。

  果皮が薄く、粒と粒の感覚が密なリースリングにとっては、まさに晩腐病
  こそがこの時期の敵ということです。


 いざ、ブドウ畑へ!

  その後、今回は初めて車に乗って、神戸ワイナリーの契約農家の畑に 
  向いました。約10kmの道のりです。丘陵地帯が広がるこの地域は本当に
  イタリアの風土を彷彿とさせるものがあります。


  
この時期で、早熟型のメルローは収穫も間近の様相を帯びていました。

  黒々とした房がたわわに実っています。驚くほどきれいにマネージメントさ
  れた畑が丘陵地帯に広がっています。

  まさに、「丘フェチ」にはたまらない光景です(^0^;)

  ここで我々に課されたミッションは何かというと


  「ブドウをツマミ食いすること」(^^;)


  あ、いや、ちがうんです。ツマミ食いのことをテイスティングとも言います(^^)

  そして、単にテイスティングするのではなく、

  @ 畑ごとの味わいの違い

  A 株ごとの味わいの違い

  B 同じ房の位置による違い

  C 同じ畑でも日当たりの良い列と悪い列の違い

  D 房の大小による味わいの違い


 
 を意識的にテイスティングするのです。一見同じブドウ品種の畑が
  広がっているだけのように思えますが、一歩畑がテイスティング会場に
  なるとこれだけのテーマを持って臨めるのです。

  ううう〜〜!僕、こういうの興奮します。

  

   広大なメルロー種テイスティング会場!

    
   明石大橋が望める畑も!


  三田村先生をはじめ、高坂さん、末松さんと色んな房を食べていって
  意見を述べ合っているのですが、僕は自分のテイスティングで悪戦苦闘
  してしまって彼らの言葉が耳に入ってきません。

  
   う〜〜ん、生ってる、生ってるメルローちゃん!



  どちらが甘いか、どちらが酸味があるのか、どれが香りがしっかりしていて
  どれがタンニンを感じられるか。これが意外に難しいのです。

  おそらくは、果皮が分厚く、噛むとすぐにタネを噛み潰してしまうほど
  果肉のない醸造用のブドウの口の中での扱い方がまだできてない、という
  感じがします。

  
   美しい!なんて美しい絵でしょう!!


  果皮にはタンニンや酸、そして色素、香りが凝縮されて詰まっています。
  あるいは、タネの周りの層にも旨味があるので、それも吸いとるように
  口の中で舐めまわして、種だけを取り出します。

  (熟れ具合は味はもちろん、タネの色からも分かります。
  種自体が緑色をしているのです。)

  

  
   タワワ〜ン! さすがに房がたっぷりしてて粒と粒の間が密!



  そんなわけで、一粒の中の成分を出来る限り抽出して知覚するために
  果皮を噛んだり、種の周りを舐めていると、それぞれの成分の味わいが
  ありますので、全体の味わいの表現が上手くまとまりません。

  ワインのようにビビビと知覚できないのです。なんでだろ。
  やっぱ慣れですかね。知覚して言葉にするまでの瞬発力が出ないのです。

  「全然違うでしょ?」とか
  「こっちの方が甘いんですよ」

  などと高坂さんが解説してくださるのですが、分かったような分からなかった
  ような・・・・というのが正直な感想です。

  いつも彼らの瞬発力にはびっくりします。
  一瞬のうちに判断して、迷いがない。

  
  
   神戸ワイナリーの方は粒のテイスティングをしながら状態を見ながら
   間引きしていきます。まるで打ち落とされた屍のようです(^^;)

   
  それにしても面白い!当たり前のことなんでしょうが、一粒一粒味が
  違うんですね。

  例えばBの房の場合、栄養分はまず房の広いところに部分を巡ってから
  先端の方に行くので、当然、房の先の方が甘みが足りないわけです。

  房の先と果梗付近では甘みの乗り、酸の出方が対照的になりがちです。

  (収穫の際は先端の粒の状況を見て判断するそうです。先端が完熟する頃
   果梗付近の粒がぐちゃぐちゃに熟れている場合があるそうです)

  
   信濃リースリングの畑



  帰り道にもう一つの畑にも立ち寄ったのですが、ところどころ鳥達に
  食い尽くされている畑もありました(^^;)カラスやムクドリの仕業だそう
  です。三田村先生以下、皆さんの「クソッ!」という感情がその畑を
  通過するときに感じられるのですが、それでも「掃討作戦」という考え
  はないようです。

  ここにも自然には従わざるを得ない、という彼らの達観が伺われます。

  それにしても何という幸せものの鳥達なんでしょう。あんなに美味しい
  ブドウを食べ放題なんですから!



 こんな事、普通じゃ絶対に出来ないですよ!
 
シラーとピノ・ノワールのブドウの比較テイスティング。

  神戸ワイナリーに戻ってからは実験畑のシラーやピノ・ノワールのブドウを
  テイスティングさせていただきました。

  シラーは神戸ワイナリー醸造チームの視野にはどうやらないようです。

  ただ、食べてみたときの甘みと酸の拮抗、そして香りの出方はシラーが  
  一番強かった。そして分かりやすかった。食用ブドウに近い感じがしました。
  おそらく食用ブドウの何倍も美味しいものです!でも、この品格は神戸
  ワイナリーは求めていないようなのです。

  神戸ワイナリーが求めるものは、唯一つ・・・・エレガントさなのです。

  だからこそ、ピノ・ノワールへの意気込みには秘めたものを感じさせ
  ました。

  決して誘導的ではないのですが、三田村先生がピノ・ノワールの粒と
  シラーの粒を比較テイスティングさせてくれます。

  「どっちのブドウが好きか、というのが問題だね!」

  とニタニタ笑ってらっしゃる。

  
   左がシラー、右がピノ・ノワール


  面白いのは、ブドウの段階ですでにワインで感じられるような差異が
  見えてくることです。

  先ほども書いたとおり、シラーは全体の迫力があってヴォリューム感が
  しっかりしていて「あ!おいしい!」とすぐに思わせてくれる味わいが
  ありました。

  それに対してピノ・ノワールは一見「酸っぱい」。香りの質もシラーとは
  全然違う。ベリー系であり、繊細な感じでした。
  でも、これが微生物と戯れるとこの酸にエレガントさが加わるんだろうな
  ということが何となく分かりました。


  でもまだ、何となく、という感じです。

   
   リースリング 果皮が薄いのでところどころ破れています・・・



  キリスト教の「パン」と「葡萄酒」が象徴するもの

  今回は午前中だけ、お忙しい中、時間を割いていただきましたので
  ワイナリーに戻って解散となったのですが、三田村先生のご好意で
  珈琲をご馳走になりました。

  いくつか印象的だった言葉を引用します。


  「キリスト教の中で”パンとぶどう酒”に象徴されるものが何かって
   ことを自分なりに感じ取ることが大事ですよ」

   「パンというのは人間が生命を維持するのに必要な食べ物のこと
   ですね。でも葡萄酒は違う。ぶどう酒は人間の”喜び”を象徴するもの。
   
   ”喜び”は人間が一番大切にしているパワーの源でしょ?

   ベートーベンの交響曲に出てくる「フロイデ〜♪」というのはまさに
   喜びのことですよ。

   喜びは楽しみとはまた全然違う。
   楽しみは喜びの入り口でしかない。喜びは人間の心の奥底で感じる
   ものです。

   だから自分なりのワインを感じ取ることが大切なんです。

   それが自分自身を照らし続けるろうそくの炎になる。」



   
三田村先生とお話しするといつもハッとさせられます。
   本当に面白いほど、生きることについて前向きになる言葉を
   投げかけてくださいます。


   
    
神戸ワイナリーにはプールがあって夏休みの子供達で賑わって
    いました。


  
※写真協力は岩瀬亜季さんでした。有難うございました!!



    次回開催予定はコチラ


   
  「ブドウ畑へ!」全レポート
   第一回 2005年5月 はじめての「ブドウ畑へ!」
   第二回 2005年6月 副梢整理と誘引
   第三回 2005年7月 ブドウ畑について尋ねる
   第四回 2005年8月 色んな畑のブドウをテイスティング
   第五回 2005年9月 発酵、圧搾、そして収穫!
   第六回 2006年1月 アッサンブラージュと剪定
   第七回 2006年3月 接木&青空テイスティング
   第八回 2006年5月 芽かき&醸造現場テイスティング
   第九回 2006年6月 誘引、巻き蔓除去、先端カット、副梢除去、花カス除去
   第十回 2006年7月 酷暑の中の誘引、まきづる除去 パート2
   第十一回 2006年8月 畑巡り&ブドウテイスティング
   第十三回 2006年12月 『グラン・クリュ大沢(オオゾ)』へ
   第十四回 2007年2月 2006収穫ワインのアッサンブラージュ
   第十五回 2007年3月 冬季剪定&接木


  トップへ  次回の「ブドウ畑へ!」    「ブドウ畑へ!」のヴィジョン

  神戸ワイン     神戸ワイン ブドウ栽培日記    神戸ワインのショッピング




 
     Copyright(c) 2006 Vite Italia. All rights reserved.