ヴィーテ・イタリア オーダーメイドツアー 旅行記 その2
  

  ソアーヴェ・クラッシコの未来像


  昨年の秋にレオニルド・ピエロパン氏にお会いして以来、是非とも
  ピエロパン氏にソアヴェ・クラッシコの地でお会いしたいと言う
  気持ちが強くなっていました。

  その記事に興味のある方は ⇒ コチラ


  それが今回実現することになって、しかも現地でお忙しい中ご挨拶に
  来て下さったのでとても感激しました

  
  さて、ソアーヴェ地区の位置について少し確認しておきましょう。

  

   色が薄くてスイマセン。この地図の薄い色で塗られたヴェローナの東にある
   地区がソアーヴェ地区であり、その一部の丘陵地帯が伝統産地である
   ソアーヴェ・クラッシコ地区で、ソアーヴェ村もこの地域にあります。

   中世以来の城壁に囲まれた長閑で静かな村です。

   
    ソアーヴェ村  村民の90%がワイン作りをしています。

   ノーマルのソアーヴェとソアーヴェ・クラッシコの大きな違いについては
   先ほどのメルマガの記事を良く読んでくださいね。
   とても重要なところです。コチラ

   ソアーヴェを理解するうえで重要なことは、ノーマルなソアーヴェが
   6000ヘクタールもの巨大な、しかも平地の畑のブドウからできるという
   事実。

   それに対してソアーヴェ・クラッシコという伝統地域は、1500ヘクタールと
   小さく、畑は丘陵地帯に広がっています。

   ワイン作りの常識から言えば、丘陵地帯の畑の方が日当たりが良く
   水はけも良いのでブドウの果実味が凝縮したものが生まれます。

   極端な話、あなたはソアーヴェというワインを見つけたらラベルにクラッシコか
   そうでないかを確かめる必要があるという事です。

   あ〜〜、でもクラッシコの中にもあるんですよ、あんまり個性のないワインが。

   そういう意味で僕はピエロパンのソアヴェ・クラッシコこそが質の高いソアヴェ
   の基準点であると考えています。

   と、ちょっと話が逸れかかりましたが・・。


   

   
   後姿のレオニルドさんは、収穫真っ只中の時期にあって忙しく、代わりに
   奥様のテレジータさんがお相手をしてくださいました。

   にこやかで温かみがあって、チャーミングでそれでいてイタリアのマンマを   
   彷彿とさせる強さを秘めた奥様でした。

   樽熟成倉庫と瓶詰め風景、そして発酵槽を見学した後に、レチョート
   ディ・ソアーヴェの陰干しのための屋根裏部屋へ案内されました。


   

   2005年は、夏に雨が降りすぎたためにブドウのエキス分が高くなく
   決して恵まれたヴィンテージではない、とテレジータさんはおっしゃたのですが
   その証拠に、今年の収穫は通年より10日ほど早く行われた、ということ
   です。

   ソアーヴェの主要品種であるガルガーネガは比較的果皮が薄く、ブドウの
   健康状態を考えても早めの収穫が得策であったようです。

   また、甘口のレチョート・ディ・ソアーヴェは生産しない、という決定をくだされ
   ました。これは僕たちにとってもそうですけど、生産者にとってはもっと
   厳しい選択だったに違いありません。

   なので、屋根裏部屋の竹でできたスノコがきれいに整頓されて立てかけ
   られた閑散とした空間だけを視察しました。


   一抹の寂しさを覚えますね。(実はレチョートの陰干し風景を見るのが
    一番楽しみだったんですよ!)


   大量生産の工場ですと、温度管理から湿度管理、また扇風機の設備も
   整えて、ブドウをレーズン状態に持っていくのですが、ピエロパン社は
   完全に「自然に従う形」で、屋根裏部屋を開け閉めして、その年の気候に
   任せる、ということです。


   これ、ワイン作りの王道ですね!!


   それでも「ラ・ロッカ」は、遅摘みするブドウから造るので、「ラ・ロッカ」の
   ブドウのこれからの出来次第ではレチョートもまだ少量造れる可能性が
   残されている、とおっしゃってられました。


   「もし収穫風景が見たければ、そろそろ行かないと皆帰っちゃうよ!」


   と呼びに来てくれたのが長男のアンドレアさんでした。(パドヴァ大学の
   醸造学を卒業されて父であるレオニルドさんから畑のマネージメントを
   修行中です)


   やはり、畑を見てナンボ!のワイナリーツアーですから、ピエロパン社の  
   最高級ワイン「ラ・ロッカ」の畑を見に行くことになりました。


   

   途中、ソアーヴェ村を望みながら、緩やかな傾斜の畑の風景を楽しみ


    「ちょ、ちょっと大丈夫?・・・・・^^;)」


   とビビッてしまうようなな急な勾配をミニバスでユラユラと登り、また下ると
   「ラ・ロッカ」の畑の区画が見えてきます。


   

   
   驚いたことに(!)、このピエロパン社最高級ワインの畑はペルゴラ
   仕立て、つまりこの地方特有の棚仕立てでした。

   大体、凝縮した味わいの樽熟成させるワインは、どのワイナリーでも   
   フランス由来の垣根仕立てでブドウを造るのですが、ピエロパン社では
   棚仕立てなのです。

   


   棚の下を覗けば、たくさんの房がぶら下がっています。
   これ・・・・普通の考え方だと大量生産の薄いワインができる・・・・
   そういう風に思ってしまうのですが、「ラ・ロッカ」はそういうレベルの
   ワインではありません。

   極めて強い個性と果実の凝縮感を併せ持つ、イタリアを代表する白
   ワインであると言っても過言ではありません。

   そのワインが、棚仕立てってかぁ・・・!?

   

   アンドレアさん曰く、このぐらいの色合いだとまだ収穫できないということ
   です。実際に食べてみたのですが、それでも甘くて酸味があって美味しい
   ブドウです。

   「もっともっと色が黄金色になったことを見計らって収穫します」

   アンドレアさんはそう言って、更に上のほうへと登っていきます。

   

   これは、この夏の大雨で土砂崩れを起こした斜面ですが、ここに
   見えている礫を良く見てください。

   これは、火山灰質と粘土質がミックスされたソアーヴェ・クラッシコの土壌の
   中でもとても珍しい礫がゴロゴロした層だということです。

   つまり、「ラ・ロッカ」の畑は水はけも非常に良い、ということですね。
   水はけが良いという事は、ブドウが余計な水分を吸わずに果実の香りや    
   味わいが凝縮しやすいことを意味しています。

   それにしても、この崖・・・・惚れ惚れしますな


   「ラ・ロッカ」のブドウの収穫のタイミングはブドウがこのレベルまで熟れて
   色が黄金色になリ、更に色を深めた瞬間です。

   良く見ると、一粒一粒の色が違うでしょ。その中で最も濃い、赤身を
   帯びたような粒が合格点です。

   

   その粒を取ってアンドレアさんが解説してくれます。

   

   結構、粒はブヨブヨなんですよ。

   で、口に含むとメチャ甘です!!で、しかも房についているブドウです
   から酸味も全然落ちていない!!柔らかくてしっかりした酸味、そして
   香り!!


   礫の土質で果実味を凝縮させ、そしてギリギリまでブドウを熟れさせる。
   そうすることによって、「ラ・ロッカ」は類稀な体格を表現しているのだと
   納得がいきました。

   

   これは、「ラ・ロッカ」の中でも最も古い区画、ソアーヴェ村の城塞を臨む
   本当に美しい光景です。

   

   アンドレアさんが言います。

   「樹齢が50年もするとどうなるか。この房を見てください。
    古い株のブドウは、粒がまばらになるんですね。生産性から言うと
    ダメなんですが、でも質の高いワイン作りにはベストです。

   粒と粒の間が離れているから、粒が健康に保たれ、しかも一粒一粒が
   しっかりと凝縮して成熟します。

   こういうブドウは僕は迷わずにレチョート用のブドウにしますね!!」


   
   

   こういう話をしている間にも収穫作業が進んでいました。

   なんでもブルガリアからの季節労働者らしいです。彼らは言葉を交わす
   わけでもなく、黙々と作業を繰り返していました。

   ちょっと仲間入りしたかったですね(^^;)

   最後にアンドレアさんに質問をしました。

   「この株が古くなって、次の株を植えるときって、やっぱりフランス式の
   株仕立てに植え替えるおつもりですか?」

    アンドレアさんと

   するとアンドレアさんの表情がひとつ引き締まったようになって
   僕にとっては意外な答えが返ってきました。

   「いや・・・実は僕はこのままのペルゴラで良いのではないかと考えて
    います。特にこのガルガーネガというブドウ品種は、成長するのに
    非常にスペースを必要とするブドウ品種なんですね。

   垣根仕立ては、房と房の距離がとても制限されますし、ガルガーネガには
   合わない。風通しも常に良くなければならない。

   だから僕は今後もペルゴラでガルガーネガを育てようと思っています」

   やはり、その土地の微気候や土質、そしてブドウの性質というものを
   人間が理解し、そして選択することによって「ラ・ロッカ」は見事なワインで
   あり続けるのだと思いました。


   アンドレアさんは、またお父さんであるレオニルドさんのことをパパは、
   パパは、と話されます。すごく慕っていることが伺えます。

   日本語のイントネーションの「パパ」じゃないんです。

   「パパア〜」という感じ。どっちかというと「ばばあ」といっしょの
   イントネーションです(^^;)


   「ケンカなんてとんでもないですよ(笑)父はだんだん僕に畑のことを
   任せてくれるようになってきたんです。

   もちろん、僕は父に色んな事を相談して、時々意見が違うときもあるけど
   あんなに穏やかな性格ですからね・・・・。

   父はだんだんと僕に任せる領域を増やしてくれているみたい。僕にとっては
   責任感を強く感じることができるし、とても嬉しいことですよ!」


   彼の純粋な話しっぷりに全くウソは感じられません。


   
   ワイナリーに戻って、テレジータさんとピエロパンのソアーヴェ・クラッシコを
   3種類、「ラ・ロッカ」を含めてテイスティングしました。

   そこでテレジータさんが言われたことで印象的だったことをいくつか
   書きますと・・・・(彼女も「夫が・・・」「夫が・・・」と言うんです(^^;)
   それもとっても自然な雰囲気で。イタリアの本物の家族像ですね(^^)


   私達は常にガルガーネガの力を信じて、その能力を磨くことだけに
   ワイン作りのすべてを捧げてきました。

   「ソアーヴェ」という安物ワインとしてだけ有名だった世間の評判の中で
   確かに苦労は多かったけど、その闘いにはすでに勝利を収めている
   といって良いと思います。

   私達は「流行」を越えたところで、ただ普通のこと、良質のワインをつくる
   ためにしなければならないことを単純に繰り返してきただけです。


   

    テレジータさんと


  テイスティングが終わったときに、参加者の一人の方が僕に近づいて来て
  言われました。


  「今の話、すごい感動しました。僕も仕事の中で端折れるところって
   あるんですよ。でもそれを端折らずにちゃんと一つ一つのことを
   しっかりやることって本当に大切なことなんですよね!」


   ん〜〜〜、実は僕も通訳しながらちょっと目頭が熱くなってたんです。

  
  ピエロパンでの時間は、収穫の時期とも重なり、少々慌しい中で終わって
  行きましたが、ポカポカ陽気の中で畑を散策し、作り手の言葉を直に聞けた   
  とても素敵な体験でした。


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